家計のために働く高校生たち…7人に1人が「貧困状態」。“見た目が普通”の子供たちに何が起こっている?

社会

 

2018/4/30

『高校生ワーキングプア「見えない貧困」の真実』(新潮社)

 現代日本で貧困家庭が深刻な問題になっている。このように誰かが訴えると、以下のような反対意見が集まってくるのが定番化した。

「何が貧困だ。スマホを持っているじゃないか。」
「服だってきれいにしているじゃないか。」
「もっと苦しい人たちもいるのに甘えている。」

 2016年に発表された厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、13.9パーセントの子供が貧困家庭に育っている。しかし、「7人に1人が貧困」という現実にピンとこない人が多いのもまた事実だろう。

 子供の貧困が見えにくくなっている。貧困やワーキングプアについて、繰り返し番組を制作してきたNHK取材班によるドキュメント本『高校生ワーキングプア「見えない貧困」の真実』(新潮社)を読むと、「社会が手を差し伸べるべき対象が声を上げられない」歪な構造に気づかされるだろう。

 本書では、親の収入だけでは学費をまかなえずに自らアルバイト生活に追われていく高校生たちの姿が綴られていく。高校3年生の優子さん(仮名)はシングルマザーの家庭で、親を助けながら弟や妹の面倒を見ている。それ以外の時間で学校とアルバイト先を往復する忙しい毎日。夜11時に帰宅してからも勉強する優子さんにプライベートの時間はほとんどない。

 優子さんのような「高校生ワーキングプア」が増えた背景には、親世代の貧困拡大が大いに関係している。特にひとり親世帯の貧困化には拍車がかかってきた。OECD(経済協力開発機構)のレポートによれば、日本のひとり親世帯の貧困率はOECDに加盟している33カ国中ワースト1位だと発覚した。(2014年 Family Database「Child Poverty」 )

 いまや大学進学を考えている高校生で、学費を親が捻出してくれるケースは半分にも満たない。55パーセントもの進学希望者が、自分で学費を稼ぐか奨学金を利用しているのが現状だ。しかし、奨学金とはおよそ800万円分の学費を「借金する」制度である。10代にして多大な借金を背負い、返済に追われながら生きていく人も少なくない。

 ここまで高校生の貧困化が進んでいるのに、どうして世間からは「そんなに大勢の高校生ワーキングプアがいるとは思えない」という意見が生まれるのだろうか。理由の1つが「学校と生徒の関わりの希薄化」である。本書の調査によると、学校教師の67.7パーセントは、生徒の経済状況に気づくのが「奨学金の申請のとき」と回答している。学校が家庭に深く介入しなくなった時代では、担任教師でさえ生徒一人一人の事情を把握しきれないのだ。

「生徒の見た目が普通であること」も理由に挙げられる。特に女子高生は、貧困家庭に住んでいても化粧を欠かさないし、オシャレな服も着ている。そのために貧困のイメージと彼女たちを結び付けにくく、「貧しいならどうしてオシャレをするのか」というバッシングも招きがちだ。しかし、実際には100円ショップで買ったプチプラアイテムや、もらいものに身を包んでいる女子高生も多い。外見だけでは子供の貧困を正確に見抜けない。

「貧困なのにスマホを使えるわけがない」という意見もある。しかし、親も自身も働きづめの高校生にとって、スマホは連絡手段として欠かせないツールだ。また、進学や就職活動にもスマホが用いられる。スマホはいわば、高校生のライフラインである。バイト代を優先的にスマホ代へと回さなければ、高校生と社会との接点は簡単に途切れてしまう。

 本書の後半では、大学卒業後に地元へとUターン就職すれば返済が免除される「ぶり奨学金」などの救済措置が紹介されている。また、貧困の定義を明確化して、「貧困を可視化する」試みも盛んに行われるようになった。子供の貧困を放置すると、社会的損失が40兆円を超えるとの調査もある(日本財団「子どもの貧困の社会的損失推計」2015年)。高校生ワーキングプアの解決は日本の未来を支えるための重大なテーマなのだ。

文=石塚就一