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今は持ち家よりも賃貸が賢明  空き家激増 住宅相場上がり目なし

以下記事転載

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大前研一「今は持ち家よりも賃貸が賢明」

空き家激増、住宅相場上がり目なし

政治・社会 2018.3.19

 

不動産の買い時・売り時、いつがいいのか?

2019年10月に消費税が10%にアップする前の駆け込み需要がどうとか、東京オリンピックパラリンピックが開催される20年に不動産価格が暴落するとか、目先の住宅問題はいつの時代もかまびすしい。

家を買いたい人、家を売りたい人にとって住宅の買い時や売り時は最大の関心事だろうが、日本人の住宅観自体が変容して住宅問題に大きな影響を与えていることを大局的に理解しておくべきだと思う。

住宅着工件数が経済指標になっているように、戦後、日本政府は一貫して住宅を景気刺激策として利用してきた。「夢のマイホーム」などと不動産デベロッパーがふり撒く持ち家信仰を、住宅金融や優遇税制その他の住宅政策で後押ししてきたのだ。バブル崩壊前までは、住宅ローンを組んで家を買うことにそれなりのメリットがあった。買った土地の値段が上がる可能性があったし、家主の昇進昇給を前提にローンの返済計画が立てられたからだ。

都内でも空き家が増えている(多摩ニュータウン)。(時事通信フォト=写真)

しかしバブル崩壊によって不動産の価値は暴落した。さらに1990年代半ば以降、名目的な昇進はあるものの、右肩上がりの昇給はなくなってしまった。

政府が罪深いのはバブル崩壊直後の92年に景気対策として「ゆとりローン(ステップローン)」を導入したことだ。これは最初は金利を安くして月々の返済額を抑え、(景気が回復して、給料や地価が上がっているであろう)6年後とか11年後から金利が上がって返済額が大幅に増えるローンで、「家賃並みの返済額で家が買える」と利用者を募り、住宅購入を煽ったのだ。

しかし、日本はそのまま「失われた20年」、世界に例のない大デフレ時代に突入、給料も不動産価格も上がらずに、逆にリストラや企業倒産が相次いで収入を維持することすら難しくなった。

当然、ゆとり返済期間終了後の返済額増加に収入が追いつかずに返済に苦しむ人が急増して、ローン破綻が続出した。住宅ローンの残債を別の金融機関で借り直して一括返済する「借り換え」をしようにも、住宅の残存価値がローン残債より高くなければ金融機関は金を貸してくれない。

実際、借り換えがほとんどできないくらい住宅価格は落ち込んだ。返済期間の繰り延べなどの救済策も取られたが、返済期間が長くなればトータルの返済額は増えるし、定年後もローンを払い続ける悲惨な老後が待ち受ける。

バブルのピークから90年代前半にかけて「通勤時間1時間20分、郊外一戸建て6000万円」のような、今聞けばとんでもない値段の物件が出回って、それに「ゆとりローン」を組んで手を出した人が結構いた。その後96年にバブルが完全に崩壊して住宅の売り買いが止まり、再び動き出したのが00年以降。05年くらいから通勤時間40分ぐらいの都心近郊で4000万円台のマンションが相当出回るようになった。しかも目先のゆとりで釣る姑息なローンではなく、長期固定金利ローンの「フラット35」。返済期間は最長35年で、金利(一時は1%を切った)は一律である。

30年前に6000万円の家を買って定年間際になってもローンで苦しんでいる人たちは、1時間20分もかかる通勤電車の中から途中駅に建った4000万円台の新築マンションを眺めると、恨めしさがひとしお胸にこたえるわけだ。

「借金したくない」から持ち家願望がない40歳代以下

ここにきて90年代前半に組まれた住宅ローンのサイクルが一巡して、ゆとりローンを払い終わった引退世代が出てきた。今の50代後半から60代はしんどい思いをして返済してきたトラウマがあって、それが消費不足の一因でもある。

その下の世代、40~50代になると昇給がないことにも20年来の大デフレにも慣れた一方、少子化の一番先頭を走っている世代で子供1人という人が多い。夫婦に子供1人なら極端なことを言えば2LDKで十分なわけで、戸建て住宅へのこだわりもない。

さらに40歳前後から下の若い世代ともなると、「家を持ちたい」という欲望のほうが少ない。「金利が低い今が買い時」と言われても、「もっと下がるんじゃないか」と何となく感じているし、そもそも家を買って借金を抱えることは大きなリスクだと思っている。我々世代にはまったくなかった発想で、「負けから入りたくない」と彼らは言うのだ。

我々にとって結婚して「狭いながらも楽しいわが家」を持つことは目標だったし、女性を口説くうえで車は必需品だった。5%の金利なんて給料が上がればいずれ返せると思っていた。だが、今どきの若い人は「いつ足元が崩れるかもしれないのに、そんな借金をするなんて人生負けから入るようなものだ」と思っている。極端な話、結婚して家庭を持つことだって「負け」の部類だ。

こうして俯瞰すれば、どの世代からも家を建てようという積極的なマインドは出てこない。だから金利1%を切るフラット35も借りる人がいない。空前の住宅ブームになるはずだったのにならないのである。つまり、住宅政策はもはや経済の起爆剤にはなりえないということだ。

そもそも住宅政策は景気対策でやるべきものではない。もっと安く家を供給できるようにするのが本当の住宅政策だろう。日本の住宅の建築コストは欧米に比べて高い。狭い住宅事情や工法の多様さ(アメリカやカナダの戸建て住宅はほとんどがツーバイフォー工法で建てられる。工法が標準化されれば建築資材を共通化しやすいので価格が下がる)など建築費が高くなる理由はいくつかあるが、私が一番の障壁だと思うのは住宅に使われる部品や部材の供給元が限定されていることだ。

ガラスもアルミサッシも石膏ボードもトイレもタイルもほとんどが独占、もしくは寡占状態になっている。海外から安い部材を取り寄せても、日本の住宅には使えない。業者とつるんだ行政当局が厳しい建築基準や規制を盾に認可しないからだ。水道関係ならJWWA(日本水道協会)などの認可を得ていないと水さえ流してくれない。世界中の材料が使えるようになれば、建築費は半分になる。そうなれば住宅ブームも起きそうなものだが、住宅資材は輸入規制がかけられているし、仮に海外の住宅資材が入ってきても、流通業者が取り扱わない、などの非関税障壁にガードされて建築コストが簡単には下がらない仕組みになっている。

今、家を買わなければ」という感覚がないのは100%正解

デフレ慣れした若い世代には「今、家を買わなければ高くなる」という感覚がない。実はこれは100%正しい。少子高齢化で19年以降、日本の世帯数は減少に転じる。このトレンドが続く限り、住宅価格が上がる理由はないからだ。

日本は世界一空き家が多い国で総住宅数に占める空き家の割合は13年に13.5%。33年には空き家率が30%を超えるとの試算もある。東京郊外でも都心から30キロを超えるような新興住宅地に足を運ぶと、怖いぐらいに人が住んでいない。商売にならないのか商店も軒並み閉まっていて、都心へ出るのも電車で1時間20分はかかる。売りに出しても買い手が付かないのだ。そうした寂れたニュータウンが日本中で増えている。

一方で住宅用地の供給は今後さらに緩む。よく言われるのは「2022年問題」。30年間、農林漁業に使うことを義務付けられた生産緑地の営農義務が22年に解除される。つまり、宅地に転用できるようになるのだ。92年に生産緑地に指定された土地は全国で約1万3000ヘクタールあって、東京で3000ヘクタール以上。東京23区だけで東京ドーム100個分近くの生産緑地があって、これがすべて宅地化されれば約25万戸の一戸建てが供給可能だという。これは年間の東京都の新築一戸建て着工件数の倍の数字だ。

都心の容積率緩和も住宅供給にプラスに働く。現状、東京23区の容積率は136%、山手線の内側の容積率は236%。平均2.3階ということだ。山手線内に匹敵するパリの都心部の平均は6階で、これはルイ14世の時代から変わらない。つまりパリ並みの町並みにしようと思えば、山手線内のビルやマンションはまだ倍以上の高さにできるわけだ。便利なエリアに住宅がふんだんに供給されて、空き家が増え続けるのだから、住宅相場に上がり目はない。つまり、基本、待って損はないのだ。

「借金からスタートしたくない」という人生観を持っている若い世代が、賃貸住宅を選択するのもきわめて現実的だ。宝くじかビットコインでも一発当てれば家を買うオプションもありうるのだろうが、悲観的あるいは見通しの悪い将来に対しては家を持つほうがリスクと考えるのは当然。賃貸なら海外勤務を命じられても問題ないし、転職する際も縛られない。子供1人なら手狭でもない。今後は賃貸物件の供給も増えるから、よほどの好立地でなければ高騰の心配もない。

超金持ちが都心3区で坪単価600万円を超える物件を買っているが、そちらもそろそろ限界に近づいている。海外の富裕層の都心マンション漁りも中国から資金の持ち出しが制限されたために2年ほど前のピークから下がり始めている。日本人にとっては、ライフプランを前提に考えると持ち家よりも借りるという選択肢のほうが賢明。そう、戦後一貫して続いてきた日本人の住宅観は根本から変わってしまったのだ。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)