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86歳女性を連れ去り口を閉ざす成年後見制度「政府委員」制度の「闇」が詰め込まれた事件

以下記事転載

86歳女性を連れ去り口を閉ざす成年後見制度「政府委員」

12/22(金) 14:00配信

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171222-00053872-gendaibiz-soci

 

 

写真:現代ビジネス

制度の「闇」が詰め込まれた事件

 〈 ……本人の現状を考えますと、本人を苦しめる以外、何の治療効果もありません。周りの関係者が勝手に本人を人質にするような行動を取られることは、本人に苦しみを与え、結果的に認知機能が低下することになります…… 〉

 〈 ……認知症の介護の基本は、記銘力の低下や見当識の低下等の認知機能を改善することよりも、大切なことは感情面が落ちついた状態にあることです。現在生じていることは、認知症患者にとって最悪の状態を演出されております…… 〉

 本人も同居する三女も、一切知らない間に裁判所に成年後見人をつけられ、区役所には一方的に「虐待を受けている」と決めつけられて、成年後見人の弁護士らに、どこかへ連れ去られてしまった東京・目黒区在住の澤田晶子さん(86歳・仮名)。

 冒頭の一文は、晶子さんを診察した精神科医が、専門家の立場から「連れ去り」の与える深刻な影響についての懸念を表明したものだ。この文章は東京家裁にも届けられている。

 これは、あまりにもひどい事件である。

 結果を見れば、裁判所、後見人弁護士、そして区役所。公の権力を持った者たちが、よってたかって、ある母娘の生活を破壊する形となったのだ。そして、このひとつの案件の中に、成年後見制度の「闇」といっていい、いくつもの問題が複雑にからみあっているのである。

 勝手に後見人をつけられたことでショックを受け、涙を流す「連れ去り」前の母・晶子さんの動画は、Youtubeでも視聴できる(https://youtu.be/pdbaCp7m0ZA)。

 私は、これまでにもメディアを通して、澤田さん母娘を襲っている、理不尽すぎる状況について情報を発信してきた。それらを論点ごとに整理してみると、こうなる。

 (1)「明らかに重度認知症とは言えないにもかかわらず、本人の意思に反して勝手に後見人をつけられた」という点
「重度認知症と勝手に判定され、財産権を奪われた」母娘の涙の訴え
(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53465)

 (2)「東京家裁が、法律に定められた手続きをスキップする『手続き飛ばし』を行い、調査も精神鑑定もしなかった上に、即時抗告に必要な通知も期限内に届けなかった」という点
「86歳女性に勝手に後見人をつけて連れ去った冷酷な裁判所」
(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53606)

 (3)「家族間のトラブルの一方に後見人と目黒区役所が加担し、母・晶子さんを同居する三女から引き離して連れ去ってしまった」という点
「役所が虐待と決めつけた86歳女性が連れ去られるまで」
(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53696)

 母・晶子さんが、自宅で同居していた三女・光代さん(50歳・仮名)の前から忽然と姿を消してから、すでに3ヵ月が経過している。

 この「連れ去り」は、家族間の対立の一方の当事者である長女・次女と、姉たちに異常なまでに肩入れしている後見人弁護士や目黒区役所が連携しておこなったものだ。

 だが、冒頭の文章で医師が深刻な懸念を表明しているように、それが母・晶子さんの健康や精神衛生によい結果をもたらすとは、到底考えられない。

 この医師は他にも、母・晶子さんと三女・光代さんの穏やかな日々を、こんな風に書き記している。

 〈 三女が仕事を辞め、母(注・晶子さんのこと)の介護を始め、一緒に散歩や買い物を行っている。以来、本人は安心から穏やかになっている 〉

 〈 夜間は良眠で、仕事を辞め母の介護をしている三女と短歌を口ずさみながら砧公園を良く散歩していると、ニコニコと話される 〉

 〈 現段階では安定し認知症の軽度にある 〉

 だが、三女の問い合わせに対し、後見人の弁護士は、母・晶子さん本人の意思で、自宅から他に移転したものであり、「連れ去りではない」と一貫して否定しているという。

 今回は、この弁護士のとっている一連の行動に注目して、報じてみたいと思う。

弁護士は「内閣府の審議会」臨時委員

 そもそも、成年後見人は、被後見人の代理として、被後見人の立場に立って行動せねばならないと法律で定められている(民法858条など)。

 今回の事件に登場する弁護士は、はたしてどうなのか。読者の判断をぜひあおぎたい。

 母・晶子さんの後見人を務めているのは、土肥尚子弁護士と川戸万葉弁護士の二人だ。

 二人は同じ弁護士事務所の所属で、このうち土肥氏は、内閣府の審議会「成年後見制度利用促進委員会」の臨時委員を務め、成年後見制度の利用を推進する立場から積極的な発言を行っている。成年後見に関する著作も複数、出版している。

 つまり「ごく一般の弁護士」というよりは、「成年後見制度の専門家であり、かつ政府によるその推進の旗振り役」でもある、重大な責任を負っている人物と言っていい。

 そんな土肥氏が、現状の成年後見制度のさまざまな問題点が一挙に噴出したような今回の案件にかかわっているのである。私は問題の「連れ去り」の経緯を含め、いくつかの論点について、土肥氏に質問状(記事末尾に掲載)を送り、取材に応じてほしいと求めた。

 だが、土肥氏は「個別案件については答えられません」「お答えできません」と頑なに繰り返すだけで、制度の専門家として誰もが納得できる説明を明らかにしようとはしなかった。

なぜ弁護士が本人宛の「通知」を

 土肥氏の一連の行動の中で、まず大きな疑問符がつくのが、東京家裁の村井みわ子判事が「手続き飛ばし」によって、一方的な審判を下した直後のことだ。

 家裁は、ある人に後見人をつける審判をした後、その結果を記した「通知」を被後見人(後見人をつけられた人)の居所に届けることになっている。

 「居所」とは、被後見人がいるところ、通常なら自宅ということになる。だが今回、母・晶子さんへの通知は、自宅には届かなかった。

 土肥氏が三女に説明したところによると、家裁は、晶子さんへの通知書を土肥弁護士の事務所に発送し、「そちらから晶子さんに渡してほしい」と依頼したというのだ。

 これが、まずもっておかしいのである。

 当然ながら、母・晶子さんは当時、弁護士事務所に住んでいたわけではない。それどころか、自分に後見人をつけるという裁判所の判断が下り、土肥氏が自分の後見人として選任されていることも、一定期間後にその審判が確定するような状況に置かれていることも、まったく知らなかった。

 後見開始の審判に対しては、被後見人本人やその家族が、異議を唱えて「即時抗告」を行うことができる。今回ならば、母・晶子さん本人にも、三女・光代さんにも、即時抗告を行う権利はあった。

 つまり、土肥氏が後見人に「つつがなく」就任するかどうかは、この時点では決まっていなかったはずなのだ。それなのに、利害が対立するかもしれない弁護士事務所に、家裁が通知を発送したというのなら、明らかにミスである。

 職業倫理に照らせば、その問題点を指摘せず、「私から渡します」と要請を受け入れたとする土肥氏の対応にも、首を傾げざるを得ない。

 さらに重大な問題をはらんでいるのは、その通知が、被後見人となる母・晶子さんの手元に実際に届くまでの経緯だ。

 成年後見にかかわる即時抗告は、「審判書が後見人に届いてから2週間以内に限って」行うことができる。ややこしい話だが、今回の案件にそくして言えば、「後見人に就任する側の弁護士の手元に、審判書が届いてから2週間以内」が期限となる。

 それを確認した上で、今回のケースがどういう経緯をたどったのか、時系列に整理してみよう。

本人と三女には「反対の余地」がない

 まず、家裁が後見人宛の審判書を発行したのは、2017年2月21日である。これは書類上も明確に記録されている。

 問題はここからだ。家裁側の説明によると、21日の書類作成直後に、家裁は母・晶子さん宛の通知と、後見人(弁護士)宛の審判書をそれぞれ発送したという。

 このうち、後見人宛の審判書は、土肥氏が三女に説明したところによると、「その2~3日後」、つまり2月23~24日には事務所に届いていたという。

 土肥氏の説明では、「家裁から、本人への通知も自分たち(後見人弁護士)から渡すように頼まれた」ということだった。

 それが事実であれば、母・晶子さん宛の通知も同じように弁護士事務所に発送されたのだから、やはり2月23~24日に届くはずだったと考えるのが自然である。

 ところが、土肥氏が三女に説明したところによると、弁護士事務所に家裁から「なんらかの書類」が3月10日に送られてきたといい、それが「晶子さん宛の通知ではなかったか」というのである。

 ここであり得る説明は、二つしかない。東京家裁の事務の怠慢によって、本人宛の通知の発送が遅かった、というケース。そして、土肥氏が3月10日に「通知らしい書類を受け取ったようだ」という、この曖昧な説明が事実ではない、というケース。

 いずれにしても、後見人宛の審判書が届いたのが2月23日だったとすると、母・晶子さん宛の通知が届いた(と土肥氏が語る)という3月10日は、審判書到着から2週間を過ぎたあとだ。

 ちょうど即時抗告の期限が切れた、その翌日に、ようやく通知が届いたことになる。

 土肥氏らの主張によれば、後見人弁護士らは3月16日に、母・晶子さんがデイサービスにいるところを訪問し、審判書の内容を晶子さんに伝えたという。

 そして、実際に晶子さんに通知を手渡したのは、後見人就任挨拶のために初めて晶子さんの自宅を訪ねた3月末だった。

 即時抗告の期限どころか、審判書が届いてから1ヵ月もあとのことだ。

 結局、法的には、3月9日までに即時抗告が行われなかったことから審判は確定してしまっていたのである。

 前半でご紹介した母・晶子さんの映像は、土肥氏らが自宅を訪ねたあとのもの。母・晶子さんは「後見なんていらない」「何でそんな勝手なことを」と涙ながらに訴えている。

 ちなみに、家裁側は現在までに、三女・光代さんに対して、母・晶子さん宛の通知をいつ、どこに発送したかについては「前の者が担当したので判然としない」などと、あきれた説明をしている。

 三女・光代さんはこんな不信感をぬぐえないという。

 「母と私に即時抗告させないために、後見人単独、もしくは後見人と家裁が示し合わせて、意図的に通知を送ってこなかったのではないかという疑念まで持たざるを得ません」

「権利を奪われたと思うなら、思うんですねっ」

 私の手元には、土肥氏らが初めて就任挨拶のために母娘の自宅を訪れたときのやりとりの録音がある。

 その中で土肥氏は、母・晶子さんへの通知を届けなかった経緯について、こんな風に語っている(カッコ内は会話の意味が通るように編集時に補足した)。

 土肥氏:「(被後見人となるべき者に対する)告知義務自体はあります。(しかし)2週間以内には(知らせなければならない、という義務は)ないということです」
三女・光代さん:「その2週間とかの(期限の問題に入る)前に、義務があったら、その(告知の)義務はいつ遂行されたんですか」
土肥氏:「だから、私を通じて渡してくださいっていう形で遂行されたんだと思います」
三女・光代さん:「だとしたら2週間を奪ったのは、あなたになっちゃうんですよ、私から見れば」
土肥氏:「どうお取りになってもいいんですけど、私としてはまだ後見人に確定していないのに、ノコノコ行って何を挨拶するのか……」
三女・光代さん:「でも、それじゃあ、逆に言えば確定してからじゃ(効力のある)反論はできないわけですから、矛盾してますよね、お話しなさっていることが」
土肥氏:「3月10日に私の事務所に届いたとすれば、もう確定した後なんです」
三女・光代さん:「でも2月22日の(裁判所での審判が終わった)時点でご存じだったわけじゃないですか。土肥さんが母に告知する義務はないんですか」
土肥氏:「(後見人になる弁護士には告知の)義務はないんです。『奪ったよ』って、あなたが思われるんでしたら、思われるんですねっ、と申し上げるしか」
三女・光代さん:「お母さんはどう思う? お母さんには2週間、異議を唱える期間があったはずなのに……。権利があったのよ、お母さんは、本当は」
母・晶子さん:「うん、聞かれてなかったもの、そういうことは」
(中略)
三女・光代さん:「これからはお母さんの財産のすべてを、この人たち(後見人)に委託して管理してもらうことになったのね」
母・晶子さん:「私が? 
三女・光代さん:「そう。お母さんの財産のことなのに、お母さんがそれに対して異議を唱えることができる2週間が、その権利が奪われてるの」
母・晶子さん:「そうねえ、2週間なんて何もなかったわね」
三女・光代さん:「自分の財産について他人(注・長女)の申し立てによって、私(注・母・晶子さん)が『そんなことやめて』っていう期間があったはずなのに、それすら知らされないで気づいたら自分の財産がすべて他人によって管理することが決定してしまっていると。それは普通に考えてあり得ない、人権侵害だなって私は思うんですね」
(中略)
母・晶子さん:「うん、まあね。何も聞いてないんで、本当に。私が(認知症で)何もわからなくなっていると思われているのかもしれませんけどね」
土肥氏:「いえいえ」

「そういう制度になってるんで」

 さらに5月29日、土肥氏が再訪問したときの会話の録音もある。

 最初の訪問時には、母・晶子さんは自分に後見人がつけられたと聞いた直後で混乱が先行していたのだろうが、それから2ヵ月が経ち、考えも整理された様子で、審判に即時抗告できなかったことについての怒りをぶちまけている。

 母・晶子さん:「(そもそも自分を重度認知症と認定し、後見人をつけるというのは)誰に許可を得て、そういうことをなさったんでしょうね? 
土肥氏:「裁判所の審判が出ま……」
母・晶子さん:「私の生活、見なくっても、そういうこと言えるわけですか? 
(中略)
三女・光代さん:「(後見人弁護士には被後見人である母・晶子さんの財産から報酬が支払われるが、それには)お母さんの許可なんか必要ないのよ」
母・晶子さん:「そんなことないでしょ」
三女・光代さん:「いや、ないよ」
母・晶子さん:「(注・怒りながら)だって私のお金でしょ。私のお金、使うはずがないじゃない、誰も!  他人が!  知らない人が!」
三女・光代さん:「でも報酬として給料も受け取りますよね、うちの母からね」
土肥氏:「そうです」
母・晶子さん:「いえいえ、ぜんっぜん!  聞いていません、それは」
土肥氏:「はい」
(中略)
母・晶子さん:「私、自分の財産(管理)を他人に頼んだこともないし」
土肥氏:「すいません、そういう制度になっているので」
母・晶子さん:「制度ったって……」
(中略)
母・晶子さん:「だけど、他人は私の面倒なんか見ないでも、この子(三女・光代さん)が一生懸命やってくれているんですよね。結構、この子もよくやってくれているし、私の方もまだぼけていませんから。いろいろな仕事もしているし」

 それにつけても、である。読者は、この一連の会話が、「重度認知症によって、判断能力が著しく衰えた」人の行ったものだと、感じられるだろうか。

 この事件に限らず、私は各記事でたびたび同じ問題提起をしているのだが、裁判所や弁護士、そして行政の担当者は、こうした理路整然とした話し口調の高齢者を指して「後見が必要だ」と平気でうそぶくのである。

制度について議論できる立場なのに

 素人目だけでなく、専門医までもが「後見など必要はない」と指摘するケースは数多い。認知症などを理由に、その人の財産権を極めて厳しく制約する成年後見制度だが、「誰のための後見なのか」「何を目的とした財産管理なのか」という疑問が噴出するような状況だ。

 今回のケースの中心人物である土肥氏は、公に成年後見制度を推進する立場にある。あやしげな専門職後見人が、被後見人の資産狙いのような悪質な事件を起こす中でも、自ら率先して、制度の適正な運営や改善、ほんとうに被後見人の人生に資する制度の見直しを絶えず提言してしかるべき立場である。

 そんな人物が、自分が制度の意義を説明すべき被後見人とその家族を前に、「すいません、そういう制度なので」とは、どのような了見なのか。

 こうした母・晶子さんへの「通知」を巡る経緯のほかにも、土肥氏の主張の中には、矛盾をはらんだものがいくつもある。

 次は、問題の「連れ去り」について、「母・晶子さん自身の意思で自宅を離れて別の場所に移った」とする説明のおかしさに注目してみよう。

 土肥氏が初めて自宅を訪問した日の録音では、母親の晶子さんははっきりとこう発言している。

 母・晶子さん:「(注・土肥氏に向かって)私は、やはり自宅にいたい、自宅が一番なんです。お姉ちゃんたち(注・長女と次女)もその辺の共通理解があればいいと思うんですけど」

 また、「母・晶子さんを施設に入れるべき」と主張する姉二人と意見が対立してきたことを前提に、三女・光代さんが不安を口にしたときには、このように返答している。

 三女・光代さん:「私が恐れているのはもう一つあって、申立人(注・長女)が施設にどうしても入れたいとなったら、申立人の言うように後見人は話を進めちゃうのかなと」
土肥氏:「そういうのはないです」
(中略)
母・晶子さん:「ただ姉たちは一切(話し合いや介護のために自宅に)来ないんですよ」
土肥氏:「なるほどね」

 ところが、こうした会話から約半年後、土肥氏らは、長女・次女の主張にそった形で、自宅で生活したいと繰り返し表明してきた母・晶子さんをどこかに移すのに協力した。

 土肥氏の一連の行動は、被後見人である母・晶子さんの財産を保全するということ以上に、むしろ長女と次女側にくみしているように見える。

「母親の生活」が関心事ではない可能性

 実は、この背景には、母・晶子さんをどこで生活させるかという論点だけではない問題が潜んでいる可能性がある。

 母・晶子さんは、2016年暮れに亡くなった夫の遺産相続のあり方について、預貯金、不動産ともに、いったん晶子さんがすべてを相続することとしたい旨、娘たちや後見人の土肥氏に伝え、娘たちも同意していた。

 ところが姉たちは、その数日後に突然、同意した内容を白紙撤回すると言い出した。

 その後、2017年6月19日付で、土肥氏から相続人各位に対する「ご連絡」文書が送られた。そこには、いったんすべてを晶子さんが相続するという母・晶子さんの希望とは異なり、自宅不動産は晶子さんが相続するが、預貯金については三姉妹で分割するという案が提示されていた。

 当然、母・晶子さんはこの案に同意しなかったわけだが、9月12日になって、デイサービスの施設から連れ去られてしまった。

 後見開始の審判の申し立てが行われ、裁判が始まったのが晶子さんの夫が亡くなった直後。晶子さんが連れ去られたのが、分割案を受け入れられないと言っていた矢先――。

 一連の出来事の起こった時期と、遺産相続を巡るやりとりの時期には、奇妙な符合が見られる。

 「家族内にあった不幸な意見対立」と整理した上で、土肥氏ら後見人がその一方に肩入れしているのではないかと指摘してきたが、この対立には介護についての見解の相違だけでなく、財産の行方に関する争いもからんでいる可能性があるのだ。

 そうであるならば、なおさら、母・晶子さんの財産権をあずかり、晶子さん本人のために資する資産管理を行うべき後見人には、慎重な対応が求められるはずだ。

 この遺産の分割案ついては、母・晶子さんが連れ去られたあとも、進展はないという。三女・光代さんはこう話す。

 「母はどこに連れ去られたかわかりませんが、その後、遺産分割の協議がまったく進展していないところを見ると、おそらく母は、いまもこの遺産分割案に強く反対しているのだと思います」

本当に守るべきは、制度やプライドなのか

 土肥氏の対応について、成年後見制度に詳しい一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表はこう指摘する。

 「後見人は、あくまで被後見人を守るために、被後見人の立場に立って、事態に対処せねばなりません。

 私は、被後見人である晶子さんに直接会って話しましたが、そもそも晶子さんは理路整然と話ができるし、後見の必要すらありません。そして、晶子さんはこのまま三女・光代さんと自宅で暮らしたいとお話になっていました。

 土肥氏は三女・光代さんに対し、いまだに母親の晶子さんの居場所すら教えませんが、晶子さんが自宅以外の、恐らく施設で暮らすことを望んでいるとは、到底考えられません。

 三女の光代さんに対して、土肥氏は『すべてお母さんが望んだことだ』と説明しているといいますが、いま晶子さん本人がどこにいるかも教えず、会わせもしないで、それが事実だとどうして証明できるのでしょうか。

 土肥氏の行動は、明らかに後見開始の審判を申し立てた長女の意思に沿ったものと思われますが、それでは後見人としての本分を、自ら踏み外しているに等しいと言えます」

 政府の委員までつとめ、中央から成年後見制度にかかわっている「専門家」でありながら、司法・行政が家族間のトラブルの一方にくみしてしまうという、成年後見制度の大きな「穴」のひとつにはまってしまったように見える、土肥氏。

 ここで言えることは、そのような専門家ですら、陥穽にハマってしまう現状の成年後見制度には、やはりどう考えても「不備」が多すぎるということではないのだろうか。

 そうではないと主張するならば、影響力を持つ立場にあるものの道義的責任として、公の場で、成年後見制度への疑義を唱える被後見人や家族、そして広く一般の人々にいま起きていることを伝えるメディアからの「問いかけ」に応えるべきではないか。

 このままでは、成年後見制度に対する不信感は、つのりこそすれ、解消されていくことはあり得ないのだから。

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※筆者が土肥氏に対して送った質問状・取材申し込みの概要は、下記の通り(挨拶部分は省略)。

東京・目黒区在住の●●●●氏(注:文中では仮名で澤田晶子さん)の成年後見人に土肥尚子、川戸万葉両弁護士が就任した成年後見審判事件(事件番号:平成29年(家)第******号)に関し、土肥弁護士におうかがいしたいことがございますので、来週中に20分程度、お時間を頂戴できないでしょうか。

(1)●●●●氏は三女と自宅で暮らすことを望み、三女の虐待疑惑も否定していました。これは、11月16日公開の「現代ビジネス」<重度認知症と勝手に判定され、財産権を奪われた」母娘の涙の訴え>の「後見人を無断でつけられ泣く母」の映像でも明らかです。そこで伺います。●●氏の長女と次女が、●●氏を目黒区のデイサービスから連れ去る際、土肥、川戸両弁護士が現場にいました。土肥、川戸両弁護士は、●●氏の成年後見人であり、●●氏の意思に配慮した行動が義務付けられています。それに反した提案をしたことについては、その手続きに違法がある疑いがあります。自宅で暮らすことを望む●●氏を連れ去った理由を教えて下さい。

(2)土肥、川戸両弁護士が、●●●●氏に対する審判書を●●氏に手渡した段階で、審判に対する即時抗告の期限は過ぎていました。土肥、川戸両弁護士氏は即時抗告が可能な期間中に、東京家裁の審判結果を承知していたと考えられます。しかも土肥、川戸両弁護士は、東京家裁から「審判書を●●氏に届けてほしい」と依頼を受けています。それにもかかわらず、土肥、川戸両弁護士は、即時抗告ができる期間中に、審判結果を●●氏と三女の〇〇(注:文中では光代さん)に伝えず、また審判書も渡さなかった。これについては、●●氏と〇〇氏から審判に対する即時抗告の権利を奪ったに等しいとの指摘もあります。土肥、川戸両弁護士は、即時抗告を重要だと考えていなかったのでしょうか。経緯と見解をお伺いしたい。

(3)●●●●氏は、夫の▲▲氏の遺産相続について、いったんすべてを自分が相続する意思を持っていた。ところが土肥、川戸両弁護士は、今年6月13日付けの「相続人各位へのご連絡」という文書で、預貯金を姉妹3人が相続するという提案を行いました。これは、●●氏の意思に反しています。土肥、川戸両弁護士は、●●氏の成年後見人であり、●●氏の意思に配慮した行動が義務付けられています。それに反した提案をしたことについては、その手続きに違法がある疑いがあります。これについての見解をお聞かせ下さい。

(4) ●●●●氏に対する診断書を書いたG病院のS医師は、家裁の審判前に、土肥、川戸両弁護士から連絡があったと、三女の●●さんに証言しています。審判前にS医師と接触した理由をお聞かせ下さい。

ご多用中、まことに申し訳ございませんが、よろしくお願い申し上げます。敬白
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長谷川 学

 

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最終更新:12/22(金) 14:00
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