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世田谷5億円詐取事件・追い詰められた地面師たちの「卑劣な言い分」・・・怖い

以下記事転載

headlines.yahoo.co.jp

世田谷5億円詐取事件・追い詰められた地面師たちの「卑劣な言い分」

12/20(水) 11:00配信

現代ビジネス

 名うての地面師、北田明こと北田文明をはじめ、配下の「東亜エージェンシー」社長松田隆文や同社の大塚洋、「プリエ」社長の茅島ヒデトこと熊谷秀人ら4人が、町田警察署の捜査員に逮捕・勾留されたのは、今年12月4日から5日にかけてのことだ。

 かつてNTT寮だった世田谷区の土地建物の売買を装い、買い手の東京都内の不動産業者、津波幸次郎(仮名)から5億円を詐取したという不動産詐欺である。

 犯行日は、2年半前の2015年5月27日にさかのぼる。その手口のあらましは前回も簡単に紹介したが、今回は被害者の証言を中心に、事件をより詳細に再現し、地面師グループの手口をレポートする。

犯行グループ最初の仕掛け

 被害者の津波は北田らの口車に乗せられ、27日になって売買取引の場所に指定されたY銀行の町田支店とM銀行の学芸大駅前支店の二カ所に、会社の社員と司法書士を派遣した。

 なぜ銀行も支店も異なる別々の場所で取引をおこなうのか、という津波の疑問に対し、北田は土地の持ち主の取引口座がM銀行しかないこと、さらに持ち主の自宅から町田が遠いという理由で学芸大駅前の支店にしたのだ、と言い繕う。これに対し、むろん津波側も妙だとは思ったが、取引の直前になってそう伝えられたため、了承せざるを得なかった。

 これが、犯行グループの最初の仕掛けだ。津波はY銀行の町田支店にベテラン司法書士と担当課長を配し、M銀行の学芸大駅前支店には司法書士事務所の若手職員を向かわせた。

 当初、津波が持ちかけられた取引は、持ち主から東亜社が元NTT寮を買い、改めて東亜社が津波に転売するという形だった。津波の社員がY銀行町田支店で売買代金の5億円を引き出し、仲介者である東亜社がそれを受け取ってM銀行学芸大駅前支店に送金して持ち主の口座に入金するという段取りだ。

 そこに、地面師グループの北田たちはもう一つトリックを用意した。それが「プリエ」の熊谷の介入である。

見せ金29億円

 取引当日の朝になると、北田たちは「プリエの熊谷が持ち主から物件を買う窓口となる」と言い出し、送金について「津波→東亜→プリエ→持ち主」という取引になったと話した。これは登場人物を増やすことによって、犯行の発覚を遅らせるという詐欺師の常套手段でもあるのだが、津波側はここでも突然の条件変更を呑まざるを得なかった。

 前回書いたように、さらにその際、津波たちは持ち主が元NTT寮のほかに仙台の山林を売りたがっているという話も、取引当日になって聞かされた。北田や松田からは、「仙台の土地取引は本件とは関係ないので、5億円さえ払えば元NTT寮の物件を買える」との説明を受けたので、それも応じた。

 これは、犯行グループが元NTT寮と仙台の山林をセットで売りたいという持ち主の要望に応えるためでもあるが、その裏で、窓口になるプリエに、それだけの資金力があるかのように見せかける工作もしていた。

 津波がその手口を明かした。

 「あとでわかったのですけど、持ち主に対しては、プリエは『すぐにでも仙台の山林と世田谷の建物(元NTT寮)を一括で買える資金がある』と説明していたのです。プリエの銀行口座にある29億円の残高を見せ、『だから安心してください』と。ところが実は、その29億円は北田が小切手を使って入金したもの。使えない見せ金だったんです」

 小切手や手形を駆使したこうした見せ金もまた、詐欺師の得意の手口だ。経営難に陥っている会社を見つけてきて、そこに手形を振り出させる。巷間、その手形は〝ポン手〟〝クズ小切手〟と呼ばれ、手形交換所に回すと不渡り確実なので、現金として引き出すことができないのだが、形の上ではその分の預金が積み上がったことになる。

 ところが津波側の司法書士でさえ、そのプリエの預金残高を見せられて信用したようだ。

 会社の資産状況を示す証拠としては、銀行に現預金の残高証明書を発行してもらうのがふつうだ。が、それだとクズ小切手による入金工作がばれてしまう。そこで北田は、通帳や残高証明ではなく、ATMの伝票を持ち主や津波側の司法書士に見せ、信用させたのである。

タバコを吸いながら足を組んで…

 実際は、よく見るとATMの伝票にも小切手による入金が小さく記されているのだが、見落としてしまったようだ。取引の現場には、相手側の司法書士である亀野裕之の部下が立ち会っていて、同じ司法書士同士でまさかそこまでするとは思っていなかったのかもしれない(前回も書いた通り、亀野はアパホテルを巻き込んだ地面師事件で逮捕されたいわくつきの男だ)。津波はこう悔しがる。

 「亀野はあちこちで悪事を働いてちょうど懲戒処分を受けている最中でしたので、正式に取引に立ち会うことができない、ということで代わりに部下に座らせていただけでしょう。その部下は自分の意思も何も無い操り人形みたいな感じで、司法書士事務所の職員も、たしかに残高はあるんだなって思ったそうです」

 津波側の担当社員や司法書士は、Y銀行町田支店で5億円を引き出し、東亜社の松田がその引き出し伝票をもとに、M銀行学芸大駅前支店にいるプリエ側に送金するものと信じ込んでいた。

 取引の第一段階である町田支店での津波たちの5億円引き出しが行われたのは、27日午前10時から12時までの間のことだった。言ってみれば、津波側の作業は町田支店で終了したことになる。あとは学芸大駅前に派遣している津波側の司法書士事務所の職員が、プリエから持ち主への5億円の入金を見届けるだけだ。事実、それができれば、持ち主から登記書類を預かり、世田谷の法務局で所有権の移転登記をおこなえる。

 ところが、待てど暮らせど学芸大駅前支店には5億円の送金がない。津波は、そのあたりの出来事も社員や司法書士からのちに詳しく聞きとり、確認していた。

 「少なくとも銀行の閉まる午後3時までには、学芸大駅前支店でプリエから持ち主の口座に入金しなければならないのですが、その時間を過ぎ、向こうにいるこちら側の司法書士事務所の職員からも、『どうなってるんだ』という電話が僕の携帯に入ってきました。町田支店で作業を完了しているのだから、うちの司法書士の先生たちは世田谷の法務局で落ち合う手はずになっていて、向かっていました」

 津波が苦渋の表情を浮かべながら、記憶の扉をあけた。

 「それで、3時40分頃に司法書士の先生に電話で確かめると、『松田が間違えて売買代金を別のところへ振り込んじゃったらしい。明日には金を戻させると言っているので、登記は明日でいいですか』という。

 思わず『ちょっと待って、それが嘘だったらどうなるんですか』と言い、そこから学芸大駅前支店の司法書士事務所の職員たちに『プリエの茅島(熊谷)はどうしているんだ』と聞いたんです。茅島は『うちは20億円くらい払おうと思えば払えるけど、商売だから、そっちからお金が来ないことにはそれまでは払えません』ととぼけていたらしい。

 そのうち、『近くで(別の)取引があるので、それを確認してきます』と言い残したっきり、銀行の支店に戻って来なかった。彼らは4時になっても、ずっと銀行の外で待っていたそうです。普通じゃないし、もう放っておけませんでした」

 津波側の司法書士は、この間、東亜社の松田と電話でやり取りをしていたようだが、もはや埒が明かない。不安を覚えた津波は迅速に動いた。その日の夕方になって、御茶ノ水にいるという松田を捕まえた。それが午後7時ごろだ。津波はこう話した。

 「司法書士といっしょに松田と向き合うと、彼はタバコを吸いながら、足を組んで余裕を見せていました。本当に振込先を間違えちゃったとしたら慌てふためいているはず。なのに、普通にしてるのです」

「結婚被害に遭っているので…」謎の言い訳

 ここまで来ると、もはや相手を信用できるわけがない。津波は松田を問い詰めた。

 「一体どうなっているんだ、と……。このとき振込伝票の控えをもらって、それですべてがわかったのです。こちらの5億円は、北田や松田によって4分割され、まったく関係のないところに渡っていました。

 一つは北田が現金で3000万円を引き出して持ち帰り、残り4億7000万円のうち、セキュファンドという会社の口座に3億2500万円、東亜に1億円、あとセブンシーという会社にも4000万円が振り込まれていました」

 東亜社の松田が4分割したうち、最も大口なのが、大阪府岸和田市に登記されているペーパー会社のセキュファンドだった。津波が言葉を絞り出すように、こう説明した。

 「松田に『セキュファンドという会社を知ってるのか』って聞いたら、『そこには電話で話して戻すことを確認したから大丈夫です』って言うんです。けど、実はそれも嘘だった。ネットでその会社を調べても、ファックス番号すら出てこない」

 業を煮やした津波は松田を連れ、その足でセキュファンドのある大阪へ向かった。最終新幹線の車中、松田はスマホをいじりながら、誰かとメールでやり取りをしていたという。津波が続ける。

 「そこで、『松田さん、疑わしいことがないんだったら、あなたのその携帯の着信履歴を見せてください』と迫ったのです。彼は最初拒んでいたんだけど、しぶしぶ見せてくれました。松田の電話には、北田の電話番号が北川という偽名で入っていました。

 LINEもやっていて『もう少し耐えろ』とか、『ギリギリまで頑張れ』みたいなことがメッセージとして残っていて、松田のほうからは『弁護士を紹介してくれ』ともありました。

 『なぜ弁護士に相談する必要があるのですか? これはどういう意味ですか』と聞いたら、最初はもごもご誤魔化していましたけど、『自分は結婚詐欺被害に遭ってるので相談しようとしてる』なんて、とってつけたような辻褄が合わない言い訳をしてました」

 大阪着は深夜になった。翌朝、振込先のM銀行に向かい、さらにセキュファンドを訪ねた。3億あまりが振り込まれたはずの銀行の口座は、すでに空っぽになっているうえ、セキュファンドがあるはずの場所に行っても、会社の看板すらない。

 そこは、誰もいないマンションの一室だった。

 (文中敬称略 次回へ続く)

森 功