武闘派法律家飯田一 みんなの法律トラブル相談窓口 かけこみユニオン支援ボランティア03-6265-6349無料 元自衛官司法書士 感謝ありがとう

司法書士飯田はじめ  依頼者の困り事いろんな法律トラブルを解決した時の感謝が生きがい

外国人実習生問題【前編】送り出し機関に課題が山積、高額の手数料・来日できない候補者

以下記事転載

神戸大の斉藤准教授に聞く実習生問題【前編】送り出し機関に課題が山積、高額の手数料・来日できない候補者

 

神戸大学大学院国際協力研究科の斉藤善久准教授(筆者撮影)

 技能実習制度の問題を改善するには、送り出し地の課題を分析する必要がある――。ベトナムの送り出し機関で実地調査を行った神戸大学大学院国際協力研究科の斉藤善久准教授(専門はベトナム労働法)がこう指摘する。技能実習制度についてはこれまで、日本の「受け入れ」側の課題が指摘されてきたが、斉藤准教授は送り出し地の課題もまた、技能実習制度における“ゆがみ”を生み出す要因になっていると強調する。11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行されたが、国境を超え労働者を受け入れる技能実習制度では送り出し地への視点が必須だ。今回は、送り出し地の課題や来日後の技能実習生をとりまく困難について、斉藤准教授へのインタビューの前半を掲載する。

    ◆渡航前と渡航後の問題がリンク

斉藤准教授が日本語を教えた送り出し機関の日本語センター(斉藤准教授提供)斉藤准教授が日本語を教えた送り出し機関の日本語センター(斉藤准教授提供)

――現地ではどのような調査をされたのでしょうか。

斉藤氏――私はもともとベトナム労働法を専門としていますが、技能実習生を取り巻く課題があることを知り、ベトナムの送り出し機関の運営する渡航前日本語研修センターで日本語を教えながら現地調査を行いました。調査を通じ、ベトナム人技能実習生については、来日以前の状況と来日後の状況がリンクしていることが明らかになりました。渡航前と渡航後の課題がそれぞれ関係し合い、技能実習生が不利な立場に追い込まれていることが見えてきたのです。中でも送り出しの前の時点で、送り出し機関や日本語研修センターに課題があることが分かりました。

――具体的には、どのような課題があったのでしょうか。

斉藤氏――技能実習制度には、技能実習生の受け入れに当たり日本の企業が直接、技能実習生を受け入れる「企業単独型」の受け入れと、日本企業と技能実習生の間に監理団体が入り、受け入れ企業が監理団体経由で技能実習生を受け入れる「団体監理型」の受け入れがあります。数的には後者の団体監理型の受け入れが大多数です。

 団体監理型受け入れでは、送り出し地の送り出し機関が、日本の監理団体とコンタクトを取り合った上で、日本の受け入れ企業に技能実習生を紹介していきます。

 その意味で、送り出し地の送り出し機関と日本側の監理団体は技能実習生の受け入れに際して不可欠な存在なのです。しかし、送り出し機関の中には不透明な事業を行うところがあります。

 

 送り出し機関の中には、もともと技術やスキルのある技能実習生候補者の中で、登録した候補者の中から合格した人を日本語研修センターに入所させ、渡航前研修を受けさせる「登録型」の送り出し機関があります。

 たとえば、ベトナム北部出身の男性Dさんは、高校卒業後にベトナムで溶接工として仕事のキャリアを積んだ人です。Dさんはある時に技能実習生として日本で働くことを希望し、技能実習生になるための知人の紹介を受け、ベトナム北部の送り出し機関T社に登録しました。

 ベトナムでは、ブローカーから安全で確実に高収入の仕事を手配してくれる送り出し機関を紹介してもらおうとする人が少なくなく、このブローカーに数百米ドルから数千米ドルの手数料を支払うケースが多いです。ですが、Dさんの場合は、知人の紹介があったため、ブローカーを利用せずに済んだのです。

 そして、Dさんは日本の造船会社の面接に合格した後、日本語研修センターに入所しました。

Dさん(斉藤准教授提供)Dさん(斉藤准教授提供)

送り出し機関の日本語研修センターは通常、全寮制ですので、Dさんはこのセンターの寮に入り、来日までの期間、日本語を学びました。Dさんの場合は、もともとの仕事のスキルがある熟練労働者で、日本企業の側の希望とも合致し、採用が決まった上で、T社の日本語研修センターに入所できました。そしてセンターに入所してから4カ月程度で来日することができました。

    ◆候補者の経歴を改ざんする送り出し機関

斉藤氏――Dさんのように、日本へ行く具体的なスケジュールや就労先企業の業種や職種が最初から分かっている人ばかりではありません。

問題が深刻だったのは、別の送り出し機関H社のケースです。このH社では、技能実習生の雇用を希望して面接に来た日本企業の業種に合わせて、勝手に候補者の経歴を作成していました。

 さらに、技能実習生の候補者は、日本企業の面接に通る前の段階で日本語研修センターに入所してしまっているため、日本企業の面接に受かり採用されるまで、研修センターで過ごしたり、自宅待機をさせられたりと、見通しが立たないまま「飼い殺し」の状態になります。

もちろん日本語研修センターに入所している期間は授業料がかかります。その上、前述のように日本語研修センターは全寮制が多いため、実家から離れての寮生活となるため、生活費や交通費もかかってきます。

    ◆学費払うも「飼い殺し」、来日果たせず

技能実習生として来日するという”夢”を叶えられなかったHさん(斉藤准教授提供)技能実習生として来日するという”夢”を叶えられなかったHさん(斉藤准教授提供)

斉藤氏――ベトナム北部出身の女性Hさんは大学では教員になるための勉強をしたのですが、教員になるために3億ドンもの賄賂が必要になると言われ、教員の夢をあきらめ、来日することを決断しました。

 そして、紹介者を通じてH社の日本語研修センターに入所しました。最初H社の日本語研修センターに4カ月いて日本語を学習していたのですが、H社の事業の不透明さなどに疑念を持ち、一度帰省します。そして夫と一緒に仕事をしていましたが、数カ月後に再びH社の日本語研修センターに入所しました。大学で学んだ分野やHさんのこれまでの仕事とは関係はなかったものの、日本の酪農農家に採用されて日本に行くことになりました。

 しかし、せっかく採用されたと思ったものの、日本の酪農農家の都合で来日時期を6~7カ月延期されてしまい、来日の見通しが立たなくなりました。このためHさんは来日を断念しました。2回目の日本語研修センター入所からこのセンターをやめるまでの期間は10カ月にも及びます。Hさんは最初の4カ月と合わせて、14カ月も日本語研修センターに入所し、日本語を勉強していたにも関わらず、結局日本に行けませんでした。

 一方、送り出し機関に納入した学費1,000万ドンと教科書代は戻ってきませんでした。

 この事例からは、送り出し機関の側が、技能実習生候補者の専門や職歴などとは全く関係のない分野の仕事を紹介していることや、来日までの間に技能実習生候補者が先の見通しがないままに時間を無駄にしてしまうことがあるということが分かります。

    ◆手数料として8,000米ドル支払う、来日後は借金返済

Dさんの実家。Dさんは借金を返しながら技能実習生として日本で働いた(斉藤准教授提供))Dさんの実家。Dさんは借金を返しながら技能実習生として日本で働いた(斉藤准教授提供))

――送り出し機関をめぐっては、高額の渡航前費用の問題も指摘されています。

斉藤氏――渡航前費用の問題は根深いです。先ほどの男性Dさんはもともと熟練工だったとともに、日本の造船会社に採用が決まった上で、送り出し機関の日本語研修センターに入所しましたので、職種や自分の専門と合致していましたし、来日までの見通しも立っていました。

 しかし、2015年の春に来日したのですが、これに先立ち、送り出し機関に手数料として5,000米ドルを支払った上で、保証金として3,000米ドルも用意しました。この費用を工面するため、Dさんが自身の貯蓄から出せたのは2,500米ドルで、残りは全て親戚から借金をしました。

 

 来日後は、月収が手取り10万5,000円でこれに残業代がついて、平均で月に13万円でした。残業代は時給1,200円です。一方、最初の2年間は2人部屋で1人2万円、3年目からは2人部屋で1人1万5千円を寮費として徴収されていました。そして、毎月10万円を実家に送金し、渡航前費用の借金返済には1年かかり、貯金ができたのはその後からでした。(「神戸大の斉藤准教授に聞く実習生問題【中編】」に続く。)