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労災で会社に慰謝料500万円要求しながらパチンコ三昧、作業員vs社長の顛末  嘘つきはダメ

以下記事転載

headlines.yahoo.co.jp

労災で会社に慰謝料500万円要求しながらパチンコ三昧、作業員vs社長の顛末

11/21(火) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 建設現場の作業員が仕事中にケガをし、労災請求。2週間ほどで治るはずだったのに、働けなくなったことを口実に、会社に対して500万円もの慰謝料請求をしてきた。会社はその時どう対応すべきか?(特定社会保険労務士 石川弘子)

K社概要
創業20年の建設業。主に戸建住宅を取り扱っている。従業員数は50名程度で、50代の創業社長を中心に結束が固い。ここ数年、売り上げがグングン伸びており、中途採用で経験豊富な現場社員を大幅に増員してきた。
登場人物
小林社長:K社の創業社長。10代から建築会社で作業員として勤め、30代で独立した。情に厚く、年上の部下とも上手くコミュニケーションを取っており、社員からは慕われている。
早川:小林社長の古くからの友人で、良き相談相手でもある一人親方(労働者を雇用せずに自分と家族などだけで事業を行う事業主)の大工。仕事には厳しく、職人仲間から「鬼の早川」と恐れられている。K社の現場を手伝うことも多く、金子と同じ現場で働いている。金子とは現場で作業の合間に世間話などをする仲である。
金子:K社に入社して3ヵ月の30代の作業員。時間にルーズで、仕事もいい加減。作業現場ではいつも同僚や早川に怒られているが、反省している様子もない。
● 高い所で作業中に バランスを崩して落下

 「ドン!」

 大きな鈍い音がして、その場にいた作業員全員が音がした方を見ると、金子が背を丸くして横になって倒れ込んでいた。

 「おい、大丈夫か?」

 一人親方の早川が声を掛けると、金子は呻くように言った。

 「脚立から落ちて腰を打った。痛くて動けない。救急車を呼んでくれ!」

 金子は、高い位置で作業をしていたところ、バランスを崩して落下したのだ。医師の説明によると、幸い骨折はしておらず、腰を打っただけとのことだという。1~2週間ほど休ませる必要があるが、入院は不要で、大事には至らないとのことだった。社長が現場にいた作業員に様子を聞くと、落ちた瞬間を見た人はいなかったが、恐らく2メートル弱の高さで作業をしている最中に、落下したのだろうという。

 2~3日して金子から会社に連絡が入った。

「腰を強打していて、歩くこともできない。しばらくは自宅療養する。労災申請(*)
をするので用紙を送ってほしい」 電話を受けた事務員は、金子からの労災申請送付の旨を社長に報告した。その後、社長は、金子の自宅アパートを訪問すると、「大変だったな。しばらく休んで、痛みが取れたら復帰してくれ」と、就業規則で定めている会社からの傷病見舞金として5万円を金子に渡した。

 *労災について:労災保険労働者災害補償保険)とは労働者災害補償保険法に基づき、業務中や通勤時のケガや病気に対して保険給付を行う制度のこと。建設現場の場合、一般的に元請業者がいて、その下に下請け業者や個人事業主である一人親方など様々な人が入り混じって作業をしているケースが多いため、労災事故の責任の範囲が不明瞭になりがちである。そこで、元請業者が下請け業者も含めてその現場で働く労働者全ての安全管理に責任を持ち、労災保険の保険料を負担している。それゆえ、下請け業者の労働者が現場でケガをしても、元請業者から疎まれるのを嫌って、あえて労災の申請をしない、いわゆる「労災隠し」といったケースも少なからずある。● 金子の要求は2週間以内に 500万円の慰謝料を払え!

 それから2ヵ月ほど経過したが、社長が定期的に連絡を入れるものの、金子からは「まだ痛みが治まらない。復帰は当分難しい」と言うだけで、復帰の目途がなかなかつかない。

 そうこうしているうちに、事故から半年ほど経った。社長が「そろそろ、復帰してもいい頃だろう」と金子に連絡した。

 すると「腰が痛くて歩けない。それより、仕事中の事故なので、会社は慰謝料等(**)
を払うべきじゃないか?」と言われ、社長は驚いた。 最初の医師の説明では、これほど長く歩けなくなるとは想像もつかなかったし、会社に慰謝料を払わなくてはいけないほどの落ち度があるとは思えない。

 程なくして金子から会社に内容証明が届き、開封するとこう書かれていた。

働けなくなった分の慰謝料として500万円を2週間以内に支払え。そうでないと、法的措置を取る。
 社長がすぐに金子に電話を入れた。すると金子は「働けない状態が長く続くので、知り合いに相談してみた。そうしたら、仕事中のケガだから、会社に責任がある。労災の給付とは別に、慰謝料請求はすべきだと言われた」と主張してきた。

 さらに金子は「今後は知り合いの野田という男から連絡が行く。自分の所には連絡しないでくれ」と一方的に電話を切った。

 *労災給付と慰謝料の関係:労働災害に遭った場合、労災保険では精神的な損害に対する慰謝料等は補償されないため、補償されない損害については、民事上の損害賠償請求により会社に請求することがある。この場合、不法行為安全配慮義務違反があったなど、会社に落ち度があることが前提である。

● 探偵からの情報で 金子のウソが判明

 社長は初めてのケースに不安になった。

 「いくら仕事上のケガとはいえ、安全管理はこれまでもしっかりとやってきた。それでも今回の事故で500万円という大金を支払う必要があるのか?そもそも、そんなに大きなケガではないと思っていたが、金子がこのまま一生働けなくなったとした場合、会社はどこまで責任を取るべきなのか?慰謝料を支払わないとすると、会社は法的に何かしらの罪に問われるのか?……」

 いろんな不安が頭の中でグルグルと回って、考えがまとまらない。そこで、当時現場で金子と一緒に作業をしていた友人でもある一人親方の早川に相談した。「えっ?あいつ、まだ休んでるの?でも、数週間前、自転車に乗っているところを見たぞ!?とっくに復帰したと思っていたんだけどなあ……」

 社長は早川の目撃情報に驚いた。

 「金子が嘘をついているのか……?」と思った社長は早川の助言で、金子を偵察することにした。当初は、社長と早川の2人で金子の家の前を張り込みしようと考えていたが、金子に気づかれる可能性が高いうえに、確実な証拠を確保する必要があると考え、プロの探偵を雇うことにした。

 2週間ほど経って、探偵事務所から報告を受けた小林は、金子の写真を見て呆れてしまった。「腰が痛くて歩けず、働ける状態じゃない」と言っていた金子は、元気に自転車に乗って、パチンコ店や居酒屋に出入りしており、中には、小走りをしているかのような写真もあった。

● 金子の証拠写真を見せると 知人・野田は顔色を変える

 その後、金子の知人である野田という男性から連絡が入り、近くの喫茶店で社長と早川が会うことになった。野田は、金子と以前同じ職場にいたことがあり、今は建設会社で人事を担当しており、労災事故について詳しいとのことだった。

 「金子さんは仕事中の事故で歩くこともできない大ケガを負っているんです。仕事中のケガについては、会社に責任があることはご存じですよね?」

 野田は「仕事中のケガは、会社に責任がある。労災請求とは別に慰謝料を払うべきだ」と執拗に繰り返した。さらに、「金子は離れて暮らす子どもの養育費等を支払わなくてはならないのに働けなくなって困窮しており、逸失利益としては妥当だ。争ってもお互いに時間とお金の無駄なのだから、金銭的に解決した方がいいのでは?」と迫ってくる。

 野田の言い分を黙って聞いていた社長は、ついに、切り出した。

 「金子は歩くこともできない大ケガを負っているんですよね?おかしいですね。私が見た写真と様子が違うようだ」と言うと、胸ポケットから厚みのある封筒を取り出し、中から例の写真を出して机に広げた。

 「ここ2~3週間で撮った写真です。全て金子ですが、とても歩けないような大ケガを負った人には見えませんよね?」

 野田は、写真を見ると驚いた様子で顔色を変えた。

 「いや、私が会った時は、松葉杖をついていたし……。いや、これはちょっと……。私も聞いていないです……。本人と話してまた連絡しますので、今日の所は失礼します」

 その後、金子からも野田からも連絡はなく、金子の携帯に電話しても全くつながらなくなった。

● 作業員仲間の証言で 金子の過去が明らかに

 早川がこの件について作業員仲間に話したところ、金子を知っているという作業員がいた。

 「あいつは、前の会社でも同じようなことをしてたなあ。自分からわざとケガをして、労災に持ち込んでいるんだ」

 仲間の話では、以前に勤めていた会社でも、同じようにわざとケガをして、会社からお金をもらったり、不正な保険請求をしたりして、トラブルになっていたことがある。さらに多額の借金も抱えているらしく、職も住居も転々としているとのことだった。

 建設現場は人手不足で、従業員を選んでいられない。時には、金子のように労災事故にかこつけて、理不尽な要求をしてくるトンデモ社員が入社することもある。

 法令に則って事故防止に配慮した安全対策を行い、過重労働が起こらないように労務管理を徹底するなど、万が一の労災があった場合にも会社側に落ち度がないよう、しっかり対策しておくことが必要だ。

 また、事故の程度に比べて、療養期間が長いと思うような場合は、本人の同意を得た上で、会社と本人と医師で面談を行い、療養期間について医師の見解を直接聞いたり、会社が別の医師に診断してもらうよう勧めるのも一つの方法だ。医師によって診断内容が大きく違う場合などは、本人が嘘の症状を訴えている可能性もないとは限らない。

 いずれにしても、金子のようなトンデモ社員に理不尽な要求をされた時、会社側が慌ててしまえば相手の思うツボ。関係者からの評判を聞いたり、社員の日常行動の情報を把握したりして証拠固めをしっかり行いながら、堂々と対峙できるよう、対策を講じる必要があると思う。

 ※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。

石川弘子