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労働基準監督署 臨検とはこわい

以下記事転載 参考

三田労働基準監督署電通に実施した労働基準監督官による「臨検」とは?

公開日 : 2016年10月20日 / 更新日 : 2017年3月6日

 https://roumu.shlc.jp/wp/archives/399

 

「臨検」は労働基準監督官が日常行う主要業務の一つ

電通の女性新入社員が自殺して労災認定されたことをうけて、東京労働局三田労働基準監督署電通本社に対して臨検を実施したことがニュースになっています。(関連記事:電通の女性社員の自殺が労災認定。問われるべきは管理者や経営者のプロ意識

元労働基準監督官として少し気になったのは、この「臨検」ですが、ニュース記事によっては、

「臨検に踏み切ることを決定した」
「臨検と呼ばれる強制調査を実施」

など、まるで労働基準監督署が今回の電通のように重大・悪質な事件を起こした会社に対して行う最終手段のような書かれ方がされています。

しかし、実際はそんなことはなく、臨検は労働基準監督官にとっての主要な業務の一つであり、労働基準監督官が毎日のように行っている通常業務です。

「臨検」は労働基準法第101条に基づく立ち入り調査

そもそも臨検とは、労働基準法労働安全衛生法の順守状況を調査するために会社に立ち入りし、資料の提出を求めたり関係者に尋問を行ったりすることを言い、労働基準法第101条で次のように規定されています

労働基準法

第101条(労働基準監督官の権限 )
労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。

労働基準法以外に、労働安全衛生法最低賃金法、家内労働法にも労働基準監督官の調査権限に関する同様の規定が設けられています。これらの中で、「臨検」という言葉は労働基準法の規定の中のみで使用されていますが、実務上は、労働安全衛生法最低賃金法に基づく立ち入り調査の場合でも「臨検」と呼ばれています。

会社の社長や人事労務を担当されている方であれば、ある日突然会社に労働基準監督官がやってきて、タイムカードや賃金台帳や就業規則などの資料の提出を求められたり、時間管理の方法などいろいろと話を聞かれたりしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この立ち入り調査が「臨検」であり、ほとんどの労働基準監督官は、毎月数件から十数件の会社に対して臨検を行っています。(労災給付のために労働基準監督署の職員が会社に訪問する場合などもあるため、訪問調査がすべて臨検にあたるわけではありません。また、臨検ではなく呼び出しによる調査を行うこともあります。)

臨検を実施した結果、労働基準法労働安全衛生法などの違反が見つかった場合は、会社に対して「是正勧告書」を交付し、法違反状態の是正を指示します。また、法違反とは言い切れないがそのおそれがある場合や労働条件などが国が定めている各種の基準に満たない場合、そのほか労働環境の改善が必要と認められる場合などには、「指導票」を交付し、その改善を求めます。

電通は、女性新入社員が自殺する以前に、労働基準監督署から長時間労働に対する是正勧告を受けていたことが明らかとなりましたが、このときも臨検が実施されていて、その結果、労働基準法違反が確認されて是正勧告が行われたのです。

臨検の実施対象となる会社の選定理由は様々

今回、三田労働基準監督署電通に対して改めて臨検を実施することとした理由は、同社が25年前にも過重労働による同様の自殺事件(いわゆる「電通事件」)を起こしていること、大々的に報道されていて社会的影響の大きい会社であること、女性新入社員が自殺する以前に行われていた是正勧告に対して是正報告をしていたが実際には是正されていなかったことなどから、事件の重大性や悪質性を問題視したためであることは間違いないと思います。

また、電通本社のみではなく、その子会社にも一斉に臨検が実施されたことについては、ニュースで報じられている通り異例の措置と言えます。

しかし、そもそも臨検は、今回の電通のように(ニュースを見る限り)明らかに労働基準法違反がある会社だけが対象になるわけではなく、毎月、一定数の会社に対して実施されているものであり、その実施対象となる会社の選定理由は様々です。

そのため、突然会社に、労働基準監督官が「臨検に来ました。資料を見せてください。」とやってきても、「うちは何も問題は起こしていない。なんでそんなことをしなくてはならないんだ。」などとは言わず、調査には素直に応じていただければと思います。

電通は、今回の臨検実施後に司法事件に切り替えられ、労働基準法違反の刑事事件として立件されることはほぼ間違いないでしょう。二度と同じような事件を起こさないよう電通には根本的な改善を徹底的に実施してもらいたいと思います。

 

 

労働基準監督官ってどんな人? 働く環境守る警察官 臨検1年がかり「心臓、強くないとね」

https://mainichi.jp/articles/20170421/dde/012/040/020000c

 

毎日新聞2017年4月21日 東京夕刊

 

電通本社へ家宅捜索に入る東京労働局と三田労働基準監督署の職員=東京都港区で2016年11月7日、後藤由耶撮影

 

 違法残業などに司法警察官としてにらみをきかす「労働基準監督官」。広告大手・電通で起きた過労自殺事件では、本社ビルに強制捜査に入る姿が映し出された。普段はどんな仕事をしているのか。知られざる監督官の姿とは--。【田村彰子】

 「労働者の駆け込み寺っていう感じですかね」

 西日本の40代の男性労働基準監督官は、自分たちの仕事をそう説明する。ブラック企業長時間労働が話題になり、労働者の意識も少しずつ変わってきた。そして「自分の職場はおかしいのかも」と思った人たちの行き着く先が、全国に321カ所ある労働基準監督署や、上部組織として各都道府県にある労働局だ。

 ここにいる労働基準監督官とは、どんな人たちか。

 厚生労働省の採用試験によって選抜される専門職の国家公務員で、全国に3241人(2016年度)いる。署長と副署長を除いた監督官1人あたり、全国平均で1486カ所の事業場を受け持つ。労働時間の上限などを定めた労働基準法や、工事現場での安全措置を義務付ける労働安全衛生法などに違反していないか監督している。

 企業などの事業場に対する通常の監督業務には、労働者からの申し立てを受けて行う申告監督と、労基署の方針に基づく定期監督がある。15年の申告・定期監督は計15万5428件。

 裁判所の許可なく立ち入り検査もでき、帳簿や書類の提出も要求できる。雇い主や労働者に尋問することも可能だ。この立ち入り検査は、労働基準法で「臨検」と呼んでいる。臨検を拒否したり、書類の提出を拒んだりすると罰金刑を科される。

 さらに「司法警察官」として強制捜査権もあり、労災事件があれば検察官に書類送検する。電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労自殺した事件では、まさに労働問題の「警察官」として注目された。15年の書類送検は全国で966件に上った。

 冒頭の監督官の話に戻そう。署内にいれば、ひっきりなしに相談の電話が鳴り、その対応に追われる。

 一例としてパワハラに関する相談を挙げてくれた。電話で「自分の上司を直接指導してほしい」との依頼。監督官が対応できるのは、原則として労働基準法などの法令に違反している場合であり、上司のパワハラは対象外となる。「でもね、最初から『それ、こちらでは対処できません』と言ってしまうと、相手も感情的になるんです。話を聞き、相手のつらい思いを一度受け止めてから、一つの方法として『個別紛争を担当している部署に、相談されてはどうですか』と切り出すわけです。そのタイミングも何年もやっていくうちに身につくものですね」と話す。

 「ここが強くないとね……」と心臓のあたりをたたく。労基署の窓口で声を荒らげたり、泣いたりする人がいるのは日常的な光景だ。

 「臨検」は気の遠くなるような作業である。首都圏の50代の男性監督官は「違反があってそれをちゃんと是正させ、後戻りしないかどうかまで見守ろうとすると、1年がかりの仕事になります。そうした案件を同時並行的にいくつも抱えているのが普通ですね」と話す。臨検は基本的に監督官が1人で行う。抜き打ちで出向き、管理者を呼び、資料を出させる。「当然、事業主は嫌がります」

 ある事業所では、3時間ぐらい社長の言い訳を聞かされたことがある。話の最中、胸ポケットから録音機がちらっと見えた。「私の失言待ちです。ぼろを出させて、それをネタにクレームをつけようとしていたようですね」。いざ書類送検の方針が決定しても、労働者たちからの聞き取り、証拠書類のとりまとめも1人でやる場合がほとんど。「とても細かくて面倒な作業です。でも、死亡事故が発生し、被災者だけではなく家族の人生も大きく変えてしまう現場をたくさん見てきましたから。新たな事故が起きないよう食い止めたい一心です」。言葉に力がこもる。

 電通の事件後、労働者からの期待感も高まっていると感じる。「残業時間の認定は複雑で難しいが、労働者も自分たちの権利を意識するようになってきた。監督官に、きちんと違反をチェックしてほしいとの思いが強まっていると受け止めています」

 この監督官という制度、日本独自のものではない。国際労働機関(ILO)の労働監督条約(81号)で特別の知識や資格を有する公務員でなければならないなど、細かく定められている。元ILO理事の中嶋滋さんが解説する。

 「ILOでは、結社の自由、児童労働禁止、強制労働廃止、反差別を掲げた八つの条約を『中核的労働基準』とし、全加盟国は批准の有無に関係なく、尊重順守することが求められます。それを実現するためにも、労働監督条約は同様に重視されているのです。企業や業界などの圧力に屈しない監督者がいることは、非常に大切なこと。日本もこの条約を批准しています」

 ILOは労働条件や安全を守るために、先進国で労働者1万人あたり1人の監督官が必要との目安を示している。しかし、厚労省が今年3月に作成した資料によると、日本は1万人あたり0・62人。米国の0・28人よりは多いが、ドイツの1・89人やイギリスの0・93人には及ばない。

 「労働環境を法の下で守る最後のとりでが、監督官です。働くことは究極的には人の生死に直結しますから、人権の庇護(ひご)者ともいえる。せめて、目安並みに実働人員を引き上げないと、増え続けるブラック企業には到底対抗していけない。もっとその存在の意味を理解し、国も私たちも重視すべきだと思います」と中嶋さんは話す。

人材不足…「民間委託」議論も

 監督官の不足が解消されない中、政府の規制改革推進会議は、定期監督業務の一部を社会保険労務士などに民間委託する検討を始めた。同会議の作業チーム主査で昭和女子大特命教授の八代尚宏さんは「政府の大方針として監督官を大幅に増やせない中、社労士に補完業務をやってもらいたい。監督官を問題のある事業場に集中すれば、より労働者を保護できる。これは業務の一部の民間開放です」と説明する。

 厚労省の資料によると、15年に定期監督ができた事業場の割合は3%だが、その違反率は69%に上る。「この数字が示すのは、少しでも監督機能を高めれば、それだけ安全になる事業場が増えるということです。とにかく監督官が足りない。十分な増員ができないなら、民間人の活用を考えるのが本筋でしょう」と八代さんは話す。

 これに対し、厳しい現場を知る人からは疑問の声が相次ぐ。元監督官で「労基署は見ている。」の著者、原論(さとし)さんは「やはり監督官は労働法の専門家です。最終手段の書類送検を背景に、妥協せずに証拠を積み上げながら、厳しく企業に改善を求めることができます。多くの社労士は、会社から給与計算などの事務作業を請け負う程度で、労働関連法令の実務にはあまり詳しいとはいえない。監督に行っても、自主点検表の域を出ることはない」と首をかしげる。原さんは社労士でもある。

 問題の深刻さをかぎ分ける嗅覚も、一朝一夕では磨かれないという。「5、6年現場を踏んでやっと一人前になれるかどうかです。監督官の中でも『チョロッと』監督して済ませてしまう、『チョロ監』なんて呼んでいることをやる人もいるんですよ。監督官を動かしているのは、経験の中で培われた使命感だけ。すぐ是正されても1件、電通の件でも同じ1件ですから。緊張感を常に持つことは大変なことです。監督官でもそうですから、経験、使命感、権限がなければ監督は無理です」

 労働問題に詳しい和光大教授の竹信三恵子さんも同じ考えだ。「社労士は会社の顧問を担当することもあり、監督官のような独立した立場とは異なります。会社が指導に耳を傾けるのは、監督官に強い権限があるからです。『怖くない指導』では、あまり意味がありません」と指摘する。

 労働組合の組織率も下がり、労働者は自己解決を求められるようになった。「労組の支えなしで会社と個人で交渉するのは非常に難しいこと。そうした局面が増え続けている今、監督官は労働者にとっての命綱にも等しい。政府が本気で長時間労働の是正に取り組む気ならば、正規の監督官の数を増やすことは絶対に必要です」と竹信さん。

 労働者の味方である監督官。その存在は、ますます重くなりそうだ。

 

 

労基署臨検の主眼は何か? 勤務管理表改ざんの摘発より重要なこと

2017年01月30日 ニュース

https://hbol.jp/127244

den-sen / PIXTA(ピクスタ)

三つどもえの摘発が止まらない

 電通に続いて、三菱電機労働基準法違反で書類送検され、労働基準監督署から是正勧告を受けたエイベックス、関西電力の社名が公表されるに至っている。次はどこかとメディアの注目は高まる中、報ずる側の朝日新聞が是正勧告を受けていたことが、それも内部告発により晒され、正す側と正される側が入り交じる様相を呈している。

 経営者の勤務管理に対する関心は飛躍的に高まり、自社は大丈夫かと戦々恐々としている経営者は少なくない。その意味で、今回の一連の摘発は、労働環境の改善に大いに役立ったと言える。広い意味での働き方改革の流れと平仄を合わせているように見える。

 取りざたされる事例では、必ずと言っていいほど、勤務管理表の改ざんが指摘されていることだ。実際の勤務時間と異なる勤務時間を記入するように、会社が社員に指示をしているという事態である。摘発されている企業は氷山の一角であると思えるが、そうだとすれば、相当数の企業で、勤務管理表の改ざんが行われていると言っても過言ではない。

帳簿改ざんをめぐるいたちごっこ

 すなわち、帳簿をごまかそうとしている会社に対して、労基署が帳簿と実態の照らし合わせ、乖離があれば摘発するという構図だ。実は、私は、そのことがどうしても気になってしょうがない。果たして、この構図で、労働環境の改善とビジネスパーソンの健康維持という本来目的を本当に適えることができるのか、という点だ。

 このように申し上げると、「改ざんを会社に指示するとはもっての他」「会社と社員の間の信頼を損なう極めて深刻な事態であるにもかかわらず、改善に役立たないとは、何を言っているのか」……という声が聞こえてきそうだ。

 改ざんが問題であることには、全く同感だ。議論の余地さえない、言語道断で、憤りさえ感じる問題だ。私が申し上げたいことは、今日の労基署の帳簿と実態の照らし合わせに終始していないかということだ。そのことが、企業を改ざんに走らせる、労基署は改ざんを見破るという、いたちごっこの捕り物を加熱させているのではないか。

 不正を正すのは当然のことで、労基署のアクションは不正を正す観点で、一点の曇りもなく正しいアクションだ。しかし、帳簿と実態を照らし合わせる臨検方法が、労働環境改善と健康維持からずれてはいまいかと思えてならないのだ。

健康被害の未然防止がおろそかになっていないか

 この問題を分解して考えると、最も守るべきあり、実現すべきことは、ビジネスパーソン健康被害を未然に防ぎ、心身ともに健康な状態で、より高いパフォーマンスを発揮していていただくことではないだろうか。だとすれば、端的に言えば、勤務管理表の記載と実態の齟齬よりも、本人の心身の健康状態のレベルの把握が、より重要となると思えてならないのだ。

 誤解を恐れずに申し上げれば、勤務時間が短い人でも健康状態がすぐれない場合は問題であるし、仮に長時間労働をしていても心身ともに本当にピンピンしている人は問題が少ないと言える。健康状態は千差万別なので、個別の状況に合わせたケアが必要なのだ。

 すなわち、残業時間という一律の量的規制ではなく、個別の健康状態を把握して、健康被害を未然に防ぐという段階に入るべきではないかということを言いたいのだ。このように申し上げると、「それが出来ないから、量的規制をしているのではないか」「出来ていれば、20時消灯だとか、全館閉鎖などという強制的な方法はとらない」……という反応をいただくことが多い。

労働時間にかかわらず健康被害の兆しの把握が不可欠

 本当にできないのであろうか。「そのような個別の把握やサポートは、今の人事部にそこまで出来るはずがない」という人は多い。そうであれば、社員100名に1人と言われる人事部のスタッフは何をしているのかと私は言いたい。

 量的規制は、簡単であるし、手間もかからないが、本来目的の実現に役立たない。個別の健康状態の把握と、勤務時間が長かろうが短かろうが、残業していようが、していなかろうが、健康状態に気がかりなことがあれば、それが重篤な状況にならないようにサポートすることに時間と労力を費やさずに、何が人事部か。

 労働基準監督署の指導の主眼は、帳簿と実態の乖離を見極めることから、人事部が社員の健康状態を把握して、健康被害の兆候をいち早くキャッチし、健康被害を未然に防ぐことを実質的に機能させているかどうかという点にシフトすべきではないか。

※「分解スキルの見極め手法」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月。ビジネス書ランキング:2016年12月丸善名古屋本店1位、紀伊國屋書店大手町ビル店1位、丸善丸の内本店3位、2017年1月八重洲ブックセンター4位)で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第25回】

<文/山口博>

【山口 博(やまぐち・ひろし)】株式会社リブ・コンサルティング 組織開発コンサルティング事業部長。さまざまな企業の人材育成・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。