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消費者センターの相談と斡旋の現実

以下記事転載

 

かけだし消費生活相談...

http://d.hatena.ne.jp/csc3/touch/20090205/1313748803

2011-08-19 19:13

ある消費生活センターの一日。(エッセイ風)

例えば、地方のあるセンターではこんな風に仕事をしています。

2009年2月。

最近暖かい日が続いているせいか、電話以外にも来訪による相談者が続々。

1.午前9時

まず朝一番、昨日電話で私が相談を受けた若い男性が来所。

かなり怪しいマルチ商法による健康食品の契約で、

「騙された!名前を勝手に使われた!」

かなり感情的になっていた男性の話を聞いたあと、

経緯と主張を書いた業者宛の「手紙」を書いて持ってくるように伝えていた。

(数百万件ものセンターの相談が蓄積されているパイオネットで調べたところ、数桁にも及ぶ同様の相談がこの業者に寄せられていた)

男性は封筒を私に差し出した。便箋で10枚超。

人間関係も含め、かなり複雑な経緯があった。

しかし、交渉材料になるところは遠慮がちに書かれており、

主張できないところ(客観的でないところ)に関して

声高に語気が強くなっている。

騙された部分は半分、あと半分は…つまり客観的な証拠はかなり彼に厳しい。

しかし、彼の言葉はすべて辻褄がある。彼に不利なことまで。

彼に社会経験は薄く、なのにドロドロした人間関係の中に置かれているのも、

そこに書かれた言葉だけでなく、全体的な雰囲気でなんとなく理解できる。

経緯を時間をかけて一言一言私がチェックしながら、

詳細に記載の助言を加えていく。

「ここでは具体的に何と言われました?そのときの認識は?」

もう一度聞き取りをしながら、法律上の問題点を伝え、

倫理的にどうかと思えるポイントを冷静に

そして、自分にもし非があったとしたらどういう点かも考えてもらう。

(本人の今後のため、そして交渉のため、あらゆることを振り返ってもらう)

男性が書き直そうと下を向いた。

私はこっそりと法律書の該当箇所に赤線を引いた。

資格は持っているとは言え、私はまだ駆け出し。

経験処理件数は2000件に満たない。ひとつひとつが勉強。

私がこの男性のかわりに「契約取消通知書」の類を書くのは簡単。

しかし、センターではそれはできない。私たち行政の立場はそういったものではない。しかし、本人が当時のことを振り返り、よく考え、

それを本人の手で書くことで、より強く柔軟な交渉力を持ち、消費者本人の能力、意識も上がっていく。

専門的なことは私たちが業者と話すときにきちんと業者に伝えるから)

そして、私達相談員は消費者問題専門家であり法律家ではない。

だからこそ「違法」なこと以外、消費生活における問題点も指摘できる。

相談をする彼らも同様だ。

2.午前9時30分

30分経過。

こちらの助言に従い書いてもらっている間にも電話がやまない。

先輩たち、電話口の相談員の手が全てふさがっていた。

男性を待たせて、デスクに戻って別の相談を電話で受けた。

「あるパソコン関連商品をネットで買ったんですが、同じ店なのに店で買う方が安いらしんですよ。ネット通販の方が安いのが当たり前でしょ。おかしくないですか!」

「確かに通販の方が安い場合が多いですが…それは業者の自由なんです。」

店によって価格が違うことを理解できない人も多い。

業者の価格設定の根拠と思われることや、

「契約の本質」や「自由経済の背景」まで、

できるだけ簡単な言葉で私からこの消費者に理解させなければいけない。

受話器を下ろせず時間がたっていく。

その間にも業者から別の相談に関する交渉の電話が入って、

デスクの目の前にはどんどん「電話が入りました」と付箋が重ねられ…

「すいません。出来ました」手紙を書き直しているさっきの男性から呼ばれた。

新たにいくつものことを書き足したものにもう一度目を通し、助言をする。

特定商取引法上の販売目的隠匿、迷惑勧誘、不実告知、

不利益事実の不告知、そして消費者契約法上、条例上の違法…。

問題はてんこ盛り。

そして、何より本人に契約の意思がない。

それは間に入って立替払いをしている信販業者からは

「業者と消費者の共謀で我々を欺いた」と反論する余地を与えるかもしれない。

業者もすぐウンという相手ではない。交渉は長期化するだろう。

が、彼がやる気なら私も頑張ろう。

次はFAXでもよいのでまた見せて下さい、と伝えた。

業者からは「センターが誘導尋問しているだろ」とよく罵倒される。

しかし、そんなことをすれば私たちの首を絞める。

だからこそ、ここは気を使い、時間も神経も使って聞き取りをする。

 

男性は来たときよりずっと表情も明るく、冷静になって帰っていった。

彼と同様のトラブルがこの業者には多いようだ。

また一つ情報が蓄積された。このままだと行政処分も時間の問題かもしれない。

彼の手紙が出来上がれば、あとは私の交渉術と本人のやる気だ。

3.午前11時

鳴り止まない電話の前に戻る。

「私はクレーマーなんでしょうか」

50代女性。プロバイダー関係の相談。

インターネット絡みの相談は業者が複数登場し、説明が難しい。

回線業者とプロバイダー業者、それに代理店が異なることを時間をかけて説明した。

代理店にも一次代理店と二次代理店がある。

私の知っている業者間の一般的な裏事情も少し伝えつつ…

しかし、この関係は実際にセンターが斡旋に入らなければわからない。

通信関係の複雑化に年配の人のみならず、若い人も実はついていっていない。

「業者も集まる、次の総務省電気通信局の会合でこの件を話題にしよう」

やっと単純な相談が入った。

よくある「サンプル」と書かれていたアダルトサイトからの請求だ。

若い女性。電話であいづちを打ちながら、指は別の相談をなぞりながらパソコンのキーを叩いている。こうやって定型化した相談を電話で受けているときには、別の相談の報告を書きながら助言することもシバシバ。忙しいときは仕方がない。

こうして口と頭は別の仕事をしていることも。電話口で泣きそうな相談者には悪いと思いながらも。

ふと、私のパソコンを打つ手が止まった。

「なんですって?もう一度その画面を説明して下さい」実体は複雑だった。

ダメだ。その画面操作では契約が成立している可能性もある。

でも、確認画面(契約内容について”もう一度”念を押す画面)を

そんな簡単にクリックすることがあるだろうか。

「でも、酔っ払っていてそこは詳しくは覚えてないんです」

援助交際をしてでも金を払えと脅かされたらしい。

しかももっと酷いことまで言われていた…。泣きじゃくっている。

契約の成立は不明だが、彼女はこれ以上関わってはいけない。

「いいですか。今から話すことを良く聞いて下さい。

公序良俗違反による契約無効の考え方等と、連絡の絶ち方、

問題がある場合の通報先を教えた。

彼女には事後的フォローが必要。メモをした。

そして、電話を切ると同時に他相談報告書の終了ボタンを押した。

4.午後1時

けたたましく電話はなり続けている。いくつもの仕事を同時並行している。

デスクの上にはいくつもの交渉のファイルが散在し、法律書や六法や新聞の切り抜きなどが散乱している。「机が仕事をしてるね」といつも私たちは笑う。

でも、実際は仕事をしているのはやはり私たち。

業者関係者からもどんどん電話がかかって来る。

「どうしてそちらはいつも電話が繋がらないんですか!」

「それって、お客さんの方がおかしいじゃないですか!」

「証拠はあるんですか!営業(担当者)は違うと言ってるんですよ!」

やりあっている間に次の手を考えながら、参考資料をめくる。

「申し訳ありません。いつも電話が混んでいて…」

ん!次の手がみつかった。

「今から資料を送るので、それでご説明します」

そして、別件の待たせている相談者のもとに走る。

正職員から「こんなに働く非常勤の人たちは初めてだ」と言われた。

目の前に深刻な仕事がどんどんやって来るので、

それに答えて働くしかない。「○○様からお電話です」知らない名前だ。デスクに戻った。案の定業者だった。

センターで交渉する中でも内容が不可解な業者は業者名でなく個人名で電話をかけてくることが多々ある。

(多数の幽霊会社をもっているから自分の業者名を忘れるのか…)

「(相談者が)ここに書いてあることは嘘だらけじゃないか!

 だいたいうちの契約は一つなのに、 なんでこんなに沢山の契約が書いてあるんだ!」

資格教材を数十社と契約を義務付け強要された相談者の交渉。

このような被害にあっている消費者の交渉を私は同時に何人も抱えている。

業者が怒涛のようにしゃべる。それを黙って聞いていた。

「何より、ここに書かれている契約日は違う。契約者は嘘を言っている」

駆け出しの私でも聞き逃さなかった

「契約書にはその日が記載されています。契約書上の契約日と実際の契約日が異なるなら、特定商取引法上の書面不備です。

法定書面が渡されてないのでクーリングオフ可能期間の起算もまだです」

私たちの土俵に乗った。

「契約日ぐらい違ってもいいだろう!」

「契約日は契約内容の中でも非常に重要です。クーリングオフの趣旨から…」

そしてダメだし。「書面不備によるクーリングオフ裁判所の判断もご存知では」

「わかった。しかしこの契約者にも問題があるのではないか…。

なんと言うか…。他の違法点の指摘には言葉を濁す。しかし交渉は少し進みそうだ。

こんなに忙しいのに、

消費者から「どうせ高給取りだろうが!」(バイトのオペ以下の時給です…)

「お前らボーナスもらってるんだろうが!」(ボーナスなんてないです…)

公務員はいいな!5時に終わって!」(実際はサービス残業してます…)

などと言われたり。

こんな風に平日終日働いているのに相談に来た生活保護を受給者と自分の収入がほとんど同じとわかった時に愕然とした。別の仕事、探そうかな…くじけるとすぐ思ってしまう。

5.午後3時

忙しさも佳境に達した夕方、先週業者からの返金が確認できた、という相談者のご家族が訪れた。続けざまに鳴っていた電話の波がすっ、と切れた。

仕切りを隔てたエントランスホールに向かった。「長い間交渉をして下さってありがとうございます。おかげで姉は救われました」初老のその方は晴れやかな表情で頭を下げられた。


その業者の契約者は高齢者ばかり。

同様の苦情がある多数ある業者にも関わらず、被害者が高齢で調書を取れない、

言った言わないに関してはすべて否定する、だから営業停止処分が困難な業者だった。実は住民には公表はしていないが、業者を呼び出してかなり注意(行政指導)をしている。ただ、それ以上の営業停止となると、証拠がなければ

業者から処分した県が反対に訴えられることもある。この業者は実際議員を動かすほどだ。だから下手は打てない。この業者に関しては、さんざん処分担当の職員とも話をしている。しかし、担当課の職員も非常に苦労をしているのがわかっているが、いくら行政指導をしても、同様のことが続くのでは意味がない。)

1年かけて関係業界団体、関係企業、

それに他のセンターに持ち込まれた相談内容も突きつけて

交渉し、その突破口になる相談だった。でも救済割合は少なかった。

数百万円の被害額のうち、たった二割。

本人が強度の認知症というだけでなく、年月がたち過ぎていたこと、

この業者に同様の相談が多数寄せられているにも拘らず、

彼らはトップは法律を熟知し、顧問弁護士もついていること。

営業担当者はシラを切り通すこと、すべてが不利だった。

お菓子を渡された。受け取れない、と断った。一応パート扱いだが公務員だ。

しかも、あれは事実上の「負け試合」…

「気持ちだけです」と帰られようとする。慌てて後を追った。

私の最初の交渉の相談者を思い出した。その若い女の子はデート商法による被害を何年も家族にも相談できず、しかも酷い二次被害にもあっていた。

彼女から感謝の手紙だ、と渡された中に数千円の商品券が入っていた。

慌てて後を追った。どうしても受け取れないんですか、と彼女は涙を流した。

どうしても、と返した。

やっと初老の女性を捕まえた。どうしても、いや受け取らない、と押し問答が続いた。「わかりました。だったらココに捨てていきます!」

「えーっ、それは…」

彼女はお菓子をほうり投げて、足早に立ち去った。彼女が「捨てた」菓子折りを仕方なく拾い上げた。行政職員に相談したら、困った顔で笑いながら「仕方ないね」と。お茶菓子にして、先輩達にも証拠隠滅に協力してもらおう。

6.午後4時

電話が鳴った。「借金が払えなくなったんです」50代ぐらいの男性。

多重債務の相談は苦手だ。なぜなら最近まで借金関係は、金融担当課の専門的な相談員が受けていたから。

その相談員らは自己破産弁護士を使わずに、できるだけ本人たちの手でできるように彼が具体的に「指導」していた。

「僕が司法書士や弁護士の資格を持っていたら、かなりの年収になったのにね」

と彼(相談員)は笑っていた。しかし、消費生活センターの機能拡大の下、

多重債務の専門相談窓口は廃止された。専門の相談員も辞めた。

名目上は「消費生活センターの機能が増えた。すばらしい」と報道されている。

しかし、実際は自治体としては機能低下だ。

私たちは忙しすぎて、彼らがしていただけのことはできない。

彼が何を望むか、彼の周りの環境は?財産は?彼の知的能力は?

それによっても、助言は異なる。特定調停で済ますか、弁護士に繋いで自己破産か、業者によっては自主交渉が可能な場合もある。

また、生活苦によるものなら、福祉関係と繋いだり、

ギャンブル依存症がみられたら、自助グループを紹介したり。

彼の収入と借金の額はあまりに不釣合いだった。とりあえず明日の来訪を促した。多重債務の相談は人生を引き受けること。気楽なグレーゾーン金利による過払いの相談もあるが、辛いものもある。

ある日女性から「父はそちらに相談に来ましたか」と電話があり、来てませんよ、と答えると、数日後自殺がみつかったこともあるという。同様の話は各センターで聞く。

7.午後5時

積まれた関係書類と交渉記録のファイルを横目に、報告書を打ち続けている間に、センター相談受付終了時間のチャイムが鳴った。慌ててドアを閉めに走った。隣の同僚が、電話を終了に切り替えた。

さて、今日も報告書書きが山ほど残った。ブラインドタッチの得意な私でも、

新規相談受け時間以上の時間が報告にはかかってしまう。

明日は四日に一度の報告書に専従できる日。一件一件、国に詳細を書いてパイオネットへの入力を通じて送信する。でも、調査や来客もありやっぱり多忙な日になるだろうな。

※ 内容については実際をそのまま書いていません。

  複数の業者を混ぜたり、分けたり、消費者も属性を変えたりしています。

  2009年に書いた状況であり、

  2011年現在の私の仕事は法改正や社会情勢の変化、

  勤務センターもかわった為に若干変化しています。